アンケート、集めただけになっていませんか?
アンケートはビジネスの現場で頻繁に採用される手法の一つですが、多くの経営者が認識しているよりも、その中に眠る可能性は遥かに大きいのです。実際、多くの中小企業では、顧客や従業員からの貴重な意見や感想が集められてはいるものの、適切な解析や活用がされずにそのまま放置されています。このままでは、企業が抱える膨大なデータの山は、貴重なインサイトの宝庫でありながら、ただの無駄なコストとなってしまうでしょう。
私も過去にアンケートがいかに重要か思い知らされたことがあります。以前勤めていた就職誌で日本の女子大生が読む雑誌No1を調査したのですが、どの雑誌か想像できますか?
じつは女性誌を差し置いて一位を取ったのは週刊少年ジャンプでした。有名な話ですが、少年ジャンプは今も昔も読者アンケートを重視しています。アンケートの評判が良ければ前のほうに掲載され、そうでなければすぐに打ち切りになってしまうこともあります。少年誌でありながら女子大生のニーズにも応えらているのはまさにアンケートを集め、何より解析してアクションを起こす流れ・ノウハウが出来上がっているからでしょう。
未活用のアンケートデータは、まさに資産の山です。経営者として、これほど直接的に収益に繋がるものを無視すべきではありません。
今回はChatGPTなどのLLM(大規模言語モデル)を活用して、アンケートの解析をいかに自動化し、具体的なアクションにつなげるかを解説します。
洞察を得るために必要な情報は何か?
具体的な例として、研修会社がその研修を改善することを目的としたアンケート、という架空のケースを題材に考えてみましょう。解析の結果としてほしいのは下記についての「何を継続すべきか」「何をやめるべきか」「なにをどう改善すべきか」などの洞察をまとめたレポートです。
- 研修の内容・形式
- 教材
- 講師とそのパフォーマンス
では具体的にどのようなステップを踏めば上記に関する有用(アクションに繋がって効果が出る)な洞察が得られるのでしょうか。大まかな流れとしては下記のとおりです。
アンケート解析の流れ
- テキストの前処理
- テーマの特定
- 感情分析
- 洞察の抽出
- レポートの作成
それでは各段階でLLMをどのように活用するか見ていきましょう。
テキストを解析しやすい形に直す、前処理
まず最初に解説するのは解析で最も重要で、かつ専門家以外には軽視されがちな前処理です。Garbage in, garbage out(ゴミを入れるとゴミが出てくる)というのはデータ分析の決まり文句で、どれだけ後工程で工夫したとしてもデータがキレイでなければ何も有用なデータは得られません。実際データ分析の時間の8割はこの前処理に使われるといわれます。
特に文章の前処理に関しては今まで人間の手で行うか、やらない(結果的にアウトプットの洞察の説得力が弱い)という状態も多かったと思いますが、LLMにとっては得意中の得意な領域です。具体的には下記のタスクをこなすことができます。
- ノイズの除去: LLMは、文脈から不要な文字や記号、不適切な言葉などのノイズを認識し、フィルタリングする能力を持っています。例えば、連続する感嘆符や無関係なURLなどを自動的に除去することができます。
- 文法やスペルの修正: LLMは、文の構造やスペルミスを自動的に修正する能力も持っています。フィードバックのテキストを入力として、誤字脱字の修正や文法的に正しい形に自動変換することが可能です。
実際に行う際はChatGPTであればそのままプロンプトに入れて上記のタスクをお願いすれば良いでしょう。実際にいくつかのケースを試してみてアウトプットを観察し、まだノイズがあるようであれば都度プロンプトを改良するのが良いでしょう。
機密情報をChatGPTに流すのはちょっと・・・
とはいえ、顧客の情報をそのままChatGPTに流すのは不安、という方がほとんどかと思います。そのためにもAzure OpenAI版のChatGPTなどを導入し自社のクラウド内でデータが完結するように環境を整えることも必要です。
大量のアンケートをいちいちプロンプトしていられない場合
また、データが大量にある場合はChat形式はあまり向いていません。その場合はLangchainやAzureのPromptFlowなどのツールを使ってプログラム的に処理する必要があります。
LangChainとは?主な機能やChat APIと組み合わせた使い方を解説!
“Prompt Flow”とは何か?その革新的な思考とAI時代の仕事上チーム協力への影響
ちなみにGPT for Sheets というGoogle Sheet用のアドオンもあります。関数のようにGPTを使うことができて手軽でおすすめです。ただしセルを更新する度にGPTがプロンプトを走らせることと、大量の処理を送るとすぐにレート制限に引っかかってしまってフリーズするので注意です。
アンケートからテーマやキーワードを自動抽出し、分析できる形に
さて、整った文章が出来上がったら次はその文章を分析可能な形にします。具体的にはLLMを使って文章ごとにテーマやキーワードを抽出します。
では上記の研修会社のアンケートのケースではどのようにするのか少し小刻みに分解してみていきましょう。
1. トークン化 最初のステップとして、テキストをトークン(単語やフレーズ)に分割します。これにより、テキストの各部分を個別に解析することが容易になります。
2. 重要な名詞や動詞の抽出 LLMは、文の中の主要な名詞や動詞を識別する能力があります。例えば、「資料がわかりにくい」から「資料」と「わかりにくい」、また、「講師の説明が明確ではない」から「講師」と「明確ではない」といったキーワードを抽出することができます。
3. 意味的なグルーピング LLMは、テキストの文脈を理解する能力があるため、関連するキーワードやフレーズを意味的にグルーピングすることができます。例えば、「資料がわかりにくい」や「スライドが複雑だ」というフィードバックがあれば、これらを「教材の明瞭性」というテーマでグルーピングすることができます。
4. 頻度ベースの分析 繰り返し出現するキーワードやフレーズを特定することで、そのテーマがどれほど重要であるかの指標とすることができます。LLMは、テキスト内のキーワードの頻度を計算し、特に多くのメンションがあるテーマをハイライトすることができます。
5. 可視化 LLMは、上記の情報を基に、キーワードやテーマのクラウドマップや棒グラフなどの可視化ツールを生成するのをサポートするプラットフォームやツールと統合することで、結果を視覚的に表示することが可能です。
感情分析で全体的な評価を概観
感情分析もLLMの得意とするところです。通常LLMはプロンプトを受け取るとテキストを返事として返しますが、これは文章を受け取ってラベルを返すもので、様々な分野で活用されています(感情でなくても悪意があるかどうかなどのラベル付けをしてSNSをコメントを監視するなど)。
ここではLLMを使って各フィードバックの感情を解析します。ポジティブな意見(「事例が有用だった」)とネガティブな意見(「資料がわかりにくい」、「講師の説明が明確ではない」)を識別します。これにより、研修のどの部分が参加者に良く受け取られているのか、またどの部分が改善が必要であるかを理解することができます。
ここではダミーのアンケートをもとに下記のような分析をしてもらいました。
材料は揃った!データの整理もした。次はどうする?
上記まででポジティブな意味で重要なキーワードが何なのか、ネガティブなもので注視しなければいけないのはどれか、という「ありのまま」の姿がより見えてきたと思います。
ここからはあるべき姿に向けて何が為されるべきか洞察を得る、というアクションの提案になります。
まずは先ほどの研修の結果の分析内容をCSVなどの形式で出力します。ChatGPTの有料版をお使いの方はこれをCode Interpreterで読み込ませ、質問することで上記について答えてくれます。
上記の講師についてのキーワード分析をChatGPTでそのままプロンプトにして下記のように質問してみました。
あなたはプロのマーケティング担当です。下記のようなアンケート結果があった場合、どのような改善案が考えられますか?具体的なアクションに結び付く形で洞察を抽出してください。その中から特に重要なものだけを3つピックアップしてください。
結果得られた回答はこの通りです。
もちろんです。提供いただいたアンケート結果およびそれに基づく改善案から、特に重要な改善ポイントを3つ選びます。
- 熱意:
- ネガティブ回答が多いことから、講師の熱意をより明確に伝えることが重要です。熱意を持って講義を行い、その情熱を言葉や表現を通じて参加者に伝えることで、参加者の関心を引き付け、学習体験を向上させることができます。
- 実例:
- ネガティブ回答が極端に多いため、講義内で実例を効果的に活用することが必要です。実際の現場や事例を挙げて説明することで、参加者が講義内容を実践的に理解しやすくなり、学習の実用性が向上します。
- 質問に対する回答:
- ポジティブ回答が圧倒的に多い一方で、ネガティブ回答も存在するため、質問に対する回答のクオリティを更に高めることが重要です。質問への具体的かつ的確な回答や、質問によるディスカッションを通じて、参加者の疑問解決と参加意欲の向上を図ることができます。
これらのポイントを重点的に改善し、講師の熱意や参加者の関心を高め、実践的な学びを提供することができるよう努めることが良い結果への道です。
注目すべきポイントが絞れてきましたね。つぎにより具体的に次につながるアクションを聞いてみたところ、このように回答されました。
熱意をより明確に伝えるための具体的なアクションを提案します。明日から実践可能な内容です。
- エネルギッシュな始動:
- 講義の冒頭で、笑顔で参加者を迎え、元気な声で挨拶しましょう。エネルギッシュな始動は、参加者に熱意を伝える最初のステップです。
- エモーショナルなストーリー:
- 自身の経験や成功体験、失敗からの学びなどをエモーショナルなストーリーとして共有します。これによって、参加者に自身の熱意と情熱を感じてもらうことができます。
- 声の強調とリズム:
- 重要なポイントや情熱をこめた部分では声のトーンを変えて強調し、リズムをつけて話すことで、聞き手の心に響く演出を行います。
- フィードバックの共有:
- 過去の受講者から寄せられたポジティブなフィードバックや成功事例を共有することで、自身の熱意と尽力が実績として示されます。
- 参加者との共感と対話:
- 参加者の関心やニーズに共感し、講義中にリアルな対話を行います。質問や意見を積極的に取り入れることで、参加者との接触を深めることができます。
- ポジティブなフィードバックへの感謝:
- 質問や発言に対するポジティブなフィードバックに対して、感謝の意を示すことで、参加者との信頼関係を構築します。
- 身体表現の活用:
- 身体の動きやジェスチャー、表情を通じて熱意を伝えることで、言葉だけではない多面的なコミュニケーションを実現します。
- リアルな例の共有:
- 講義中にリアルな事例や実用的なエピソードを挙げて説明することで、自身の熱意と知識を実践に繋げることができます。
これらのアクションを取り入れることで、講師の熱意をより明確に参加者に伝えることができます。早速明日から試してみてください。
熱意という少し曖昧な内容でも、かなり講師へのフィードバックがしやすい洞察が得られていますね。
アクション可能な洞察につながるアンケート解析を自動で。
いかがでしたでしょうか。全体的な解析の流れやChatGPTなどLLMとのやりとりもイメージして頂けたのではないでしょうか。ご覧頂いた通り、ChatGPTでもかなりの部分を自動化できますが、全自動というわけにはいきません。自社内でのLLM環境を整えてツールをつくればアンケートを入力として受け取って、レポートを自動で出力する、ということも可能です。
カスタマイズのヒントはこちらにも解説していますので是非興味があればご覧ください。
*この記事は生成AIによって半自動的に生成しています。
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