前回は目標管理をNotionでどのように実装するかを説明しました。目標管理はどんな指標でも設定可能ですが、特に経営層としては「利益は出ているのか?」という点について詳しく、できればリアルタイムに知りたいのではないでしょうか。
今回は案件ごとに利益が出ているかを把握する予実管理をNotionで実装します。
案件単位で儲かっているか把握していますか?
沢山の案件が走っていると各案件単位で儲かっているかどうかを知るのは意外と難しく全体像を把握している人が社内に誰もいないということも頻発します。
たとえば
- 売上については経営層や営業、経理は知っているが開発の現場は関知していない
- 開発予算については営業と開発の間で議論するが経営層や経理が知るのは時間軸としては後。また頻繁に見直しが入る。
- 実際の原価やキャッシュフローを案件ごとで知り得るのは経理かもしれないが、経理は案件ごとに分類しない(できない)こともしばしば。この場合案件の開発予算を遵守できそうなのかを把握しているのは手計算しているプロジェクトリーダーのみ。それも忙しいと手計算しない可能性もあるので、社内の誰もその案件がちゃんと利益を出せそうなのかリアルタイムで把握していないことになる。
予実管理はかなり煩雑な作業ですが、Notionでデータを分類しつつ経理データを紐づけることで比較的高いアカウンタビリティを発揮することができます。
月次の数字の報告を見て「この費用はなぜこんなに膨らんでいるのか?」など議論することなく、Notion上で膨らんだ費用の内訳をたどっていくことができれば無駄な会議や集計を待って次の会議で議論するというような待ち時間も省くことができ、よりスピーディなマネジメントを行うことができます。
今回行うことは次の通りです。
- 予算の設定
- 実費の集計
- 着地の記入
- 関連するタスクの紐づけ
- 予実の管理
全体像
まず全体像をご説明します。使用しているプロパティは下記のとおりです。
()内はプロパティの型
- 案件(リレーション):プロジェクト管理と相互にリレーションを張っています
- Name(タイトル):これは予算の名前です。この粒度は自由ですが、実費の紐づけがしやすいもの(請求書が発生するもの)を販管費を除く形でカテゴライズしましょう。
- 予算(数値):これは手入力です。上記のように販管費は除くようにしましょう。(プロジェクト横断で発生しているためプロジェクトごとに帰属させることはできません)
- 着地(数値):こちらも手入力です。前回の目標管理と同じように、着地の予想はどうしても微調整が必要になります。実費を参照しながら合計の金額を入力しましょう。
- 実費(ロールアップ):別のデータベースである仕訳(別ブログにてご紹介します)とリレーションを張り、そこから出費の金額を合計しています。仕訳データは会計ソフトからインポートします。
- 予実(関数):予算-着地です。これがマネジメントする対象になります。分かりやすくバーで表示しています。
- 仕訳(リレーション):これは実費をロールアップで集計するために使っているので、実際には表示していません。
レイアウトはテーブルにし、案件名でグループ化、各列の下にはSUMで合計値を集計しています。
予算の設定
予算の設定に実際に必要な項目は予算の数字のみですが、予算を設定する際にはそのロジック、背景、明細など追加で必要な情報があるはずです。この情報が揃っていると予実が合わない際どの点が非現実的だったのか振り返ることができますので、本文(カードを開いてコメント欄の下にある部分)に記入していきましょう。(この部分をさらにデータベースで管理することは可能ですが複雑になるためあくまで予算に関する参照情報をまとめるという点にとどめます。)
もちろん必ず紐づけてほしい情報(計算したスプレッドシートのURLなど)があればプロパティに追加するのも良いでしょう。
実費の集計
これは仕訳データベースとリレーションを張り、ロールアップすることで集計しています。ここでいう仕訳データベースは会計ソフトの仕訳データをインポートしたものになります。詳細は別ブログにて紹介しますが、一旦ここでは実際に支払いの発生した金額が入ると思ってください。
これは着地の予想にも使えますが、経営陣、財務担当者にとってはキャッシュフローを把握する重要なデータにもなります。資金繰りをする際には各プロジェクトで追加で発生するキャッシュアウトはいくらなのか?を把握するのはなかなか大変ですが、このデータベースでは着地と実費の差が将来のキャッシュアウトになります。(これをさらに月ごとにまとめられると最高ですが、別のデータベースが必要になるためこのブログではあくまで実費をインポートして、着地の予想、追加のキャッシュアウトの把握という点にとどめます。)
これを行うためには別のビューを作成して、追加で下記のプロパティを作成します。
- 将来のキャッシュアウト(関数):着地-実費
上記の二つのプロパティを残して全てのプロパティを非表示にするとわかりやすいと思います。レイアウトはテーブルで同じようにSUMで列を集計しています。
着地の記入
こちらは手入力ですが、実費を見ながら諸要素を鑑みて着地点を調整します。デフォルトでは予算と一致しているはずですが、状況が変わり次第変更していく必要があります。
その際コメント欄に変更の履歴とその理由を書いておくと、初めて見る人でも状況や履歴が一目でタイムスタンプ付きで理解することができます。
関連するタスクの紐づけ
着地のところにURLを添付して、状況が変わった理由などがわかるタスクのカードを身に行けるようにしておくとなぜ着地が予算とずれているのかの説明が簡単になります。
予実の管理
ここまで設定ができたら、あとはマネジメントの仕事です。下記のように状況を確認し、打てる手を検討しましょう。
- 予実があっているか
- あっていない場合原因はどこか
- その原因は悪性か良性か。対処は必要か。
- 対処する際はプロジェクトの中に具体的にタスクカードを作成しアサインし、そのURLを着地のカードに添付。TODOの進捗を管理
結果と原因を素早く分析することでスピーディなマネジメントを!
いかがでしたでしょうか。今回はプロジェクトごとに利益が出ているかどうかを把握する予実管理をテーマにしました。プロジェクトの進行だけでもリーダーは忙しいと思いますが、すべての計画(Plan)と活動(Do)の結果である予実(See)の異変を早めにとらえることでより多くの打ち手を講じることができます。
また経営陣や財務の方は現場へ都度ヒアリングしたり別途レポーティングさせるのではなくデータの流れをつくって必要に応じて詳細を勝手に見に行くことで、現場は仕事に集中できますし、よりリアルタイムな異変をとらえることができます。
是非Notionで予実をつかむことでスピーディなマネジメントを実現していきましょう!