DXの本質は、会社という生きた組織の間にある循環を巡らせるもの。体でいうと、血流が良くなって全身に必要な要素が行き渡り、詰まったり凝り固まったりしていた部分が改善され、結果的に効率化・生産性向上に大きく寄与する、そんなものなのもしれません。
物理的な距離や部署の垣根を超えた個々のつながりを活性化させ、強い組織へと成長を遂げるための一歩。ただツールを導入するだけで、すぐに便利になるとは限りません。どんな機能が必要で、活用フェーズに至るまでのプロセス設計とサポート、導入した先にどんな未来があるのか、ケア次第で基盤となるかどうかが決まる。そこに、わたしたちが介在する意味があると思っています。
今回の事例は、アナログな傾向が強い不動産・建築業界の中で、会社の未来を見据え、DXに大きく舵を切った転換期の奮闘記vol.1です。オンラインミーティングの練習をオフラインで行うぐらいデジタルとの接点が少なかった組織から、今では自社専用アプリを開発し、お客様とのやりとりもオンライン化。社員のみなさんがそれぞれの業務がよりスムーズになるためには?もっとお客様に寄り添うためには?と自発的に意見を出しながら、自走する組織となっています。
最初にご相談いただいた2021年10月以降、現在もサポートさせていただきながら、新たな挑戦を続けていますので、ぜひご覧ください。
京都・滋賀を中心に分譲マンション「パデシオンシリーズ」を企画・販売してきた睦備建設様。「1への挑戦」というミッションを掲げ、1㎡でも広く、1円でも安くマンションを提供することを目指し、子育て世代から厚く支持されながら、約70棟/7,000戸もの住まいを提供されてきました。
ですが、京都の分譲マーケットは土地の価格・材料費・人件費が高騰する一方。この10年間で、マンションの価格は2倍近くとなりました。創業26年目にして、事業のこれからをどう成長させていくのか。大きな転換期となるタイミングでした。
当初ご相談いただいたのは、「Wi-Fiを入れたい」という内容。ネットワーク構築のプロフェッショナルではないものの、現状をお伺いした上で、何かお役に立てれば…そんな思いで臨んだ初めてのオンラインミーティング。よくよくお話を伺うと、ちょうどコロナ禍も少し落ち着いて来た頃。これまでは出社を前提とした働き方だったものの、社員のみなさんが安心して仕事ができる環境を整えたい。そのために、今は共有サーバーへのアクセスは出社して社内イントラに接続するしかない状況を、環境を選ばずに働けるように整備できないか?という内容でした。
おそらくこの時の専務の頭の中には、やりたいことの方向性はあるものの、業界的にも非常にアナログであるため、仮にデジタルツールを導入したとしても活用できるのか?というご不安があったのだろうと思います。
ご要望も理解できたので、グループウェアの導入をご提案。どんなことができるシステムなのか、導入までのステップ、スタックしそうなポイントなどをヒアリングの上、Google Workspaceをおすすめすることに。類似のサービスは他にもあるものの、ユーザー単位で気軽に始められること、何よりも私たちが日常的に使っているため、具体的なサポートを行いやすい、という点。まずは最小単位の人数で、便利さを手軽に感じられる機能から導入することを決め、現地でレクチャーを行うこととなりました。
組織図をヒアリングし、アカウント登録に必要な情報をまとめていただくためエクセルの表をお渡し。ユーザー登録や組織・権限の設定やドメイン接続など、ログインすればすぐに使える状態に整備。管理表を作成して、管理者が一覧を確認できるようにしておきました。
まず、ノートパソコンから自身のアカウントにログインするところからサポート。Google Meet(zoomのようなビデオ会議システム)を全員で繋ぎ、基本的な機能をご案内しながらチャットを使ってメッセージを送りあっていただく。慣れてきたらカレンダーからGoogle Meetに招待をかけて入ってもらう。会議室を分けて、各部屋に一人ずつサポートを置いて進める。など、約半年ほどかけて日常的にMeetやチャット、カレンダーを活用するまでサポート。
どのような業務がDXに向いているかをご案内。例えば、作業報告や工程表など最新の情報を関係者全員と共有しておきたいものや、紙で管理している顧客情報、お客様へ実施しているアンケートなど、実際に使用しているものをお預かりして、スプレッドシートやGoogle formに変換してお戻しし、使い方をご説明の上ご意見をいただく、など。小さなことでも便利さを感じていただくことで、日々の業務の中で「ちょっと手間だな」と感じた時に、解決できるのでは?という視点を持っていただくため、積極的に介入していました。
Google Workspaceを導入したことが、組織にもたらした変化は本当にたくさんありました。デジタルへの苦手意識がなくなったことや、コミュニケーションの増加。部署を超えて業務効率化へ向けて積極的に協業するようになり、今では複数のDX関連プロジェクトが自然発生しています。
最初は5名のユーザー登録から始まったプロジェクトが、今では全社員が日常的に使うツールとなり、毎週の定例以外にもちょっとした相談やDX関連のご質問をいただくまでになりました。
デジタルも、使うのは結局「人」。ツールだけ入れて、はい終わり。そんな支援にならないように、しつこいぐらい向き合っていきたいと思っています。まだまだDX支援は続いていきますが、大きな転換期に、準社員のように関わらせていただけたこと、本当に感謝するとともに、嬉しく思います。
仕事は回っているけれど、組織や未来に凝りや詰まりを感じられたら、ぜひバレンサーにご相談ください。その不調、ほぐれるまでしっかりと向き合わせていただきます。